書評

宮部みゆき『ステップファーザー・ステップ』

双子の男の子(どうにもカワイイ!)が出てくる愉快な泥棒小説。いちおうミステリーだか謎はほんとにライトなもので、ユーモアと淡いペーソスで読ませる。実は宮部みゆきって初めて読んだんだけど、凄いな上手いもんですね。 語り手は泥棒で、浸入の準備として…

ウィリアム・メルヴィン・ケリー『あいつら』

一種の双子もの小説ということになるかと思う。ただ双子の要素は少なめで、人種差別を引き起こすアイデンティティーやリアリティーの崩壊不安が主題になっているように思う。ディックなどを想起する人もいるかも。かなり読みどころの多く、面白い。 ちょっと…

川端康成『古都』

『古都』は奇妙な小説であると感じた。 ヒロインの千重子は出生に謎がある。京の呉服屋の一人娘として育てられたが、父母は彼女を拾った、可愛かったので攫ってきた、母は実母ではないがこの家で生まれたのだ、等々、定かならぬことを言う。いずれにしても、…

リャマサーレス『黄色い雨』

フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』が河出から文庫で出た。10年ほど前にヴィレッジブックスから出た単行本からは、短編が2つ増えている。表題作は、詩情豊かな叙述が美しく、訳書の単行本刊行時から評判だったように記憶する。国際的にもこの作品の評判は…

J.M.クッツェー『マイケル・K』

10年ぶりに『マイケル・K』を再読した。心底感動した。 年老いて病気になった母親を、ケープタウンから、彼女の故郷である内陸の農場へ連れていくため、荷車に乗せて押してゆく。奇妙な子連れ狼のようなロードムービー的シーン。 母親は家政婦として長く苦役…

アデイーチェ『アメリカーナ』

アメリカーナ作者: チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ,くぼたのぞみ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る ナイジェリア出身で、米国で高等教育を受け、現在はナイジェリアとアメリカを行き…